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三十余年のアーカイヴ ~ HALDYN DOME 発売に寄せて [四方山話]

平沢進ソロ20世紀作品BOXセット「HALDYN DOME」。
正月に平沢氏自らがTwitterで発表してから、
2月中旬の正式告知、そして2/29の発売とあっという間の出来事でした。
申し込んだ皆さんの元にもそろそろ届いた頃でしょうか。
そこで今回は、このBOXセットに含まれているであろう意図を、誤解を恐れずに考察します。
ネタバレ前提の持論を展開しますのでご注意。
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メジャーレーベル在籍時のオリジナルソロアルバム・シングル・サウンドトラックに
DIW/SYUN・biosphereレーベルから発表した諸作品を収納したハルディンドームの登場と、
2002年に発表されたP-MODEL BOXセットで
廉価版の再発予定が発表されている「太陽系亞種音」の存在により、
平沢進の三十余年に渡るミュージシャン活動での主たる作品は
現事務所であるケイオスユニオンの公式通販から
ほぼすべて入手可能になったのだと、改めて実感します。
いわば平沢進アーカイヴは、これにて完了したのではないでしょうか。


重箱の隅的なことを言えば、ハルディンドームから漏れた曲はいくつもありますし
他ミュージシャン提供楽曲も、一部曲がリメイク収録された以外は入ってません。
ただ、それらの曲はクオリティやその他の理由で
2012年現在の平沢氏の意図から外れた故に収録を見送られたのでしょうし、
この先、よほどのことが無ければ公式リリースされることは無いと思います。
個人的には十数分に及ぶアンビエント大作の「木と風と水の音楽」だけは
機会があればリメイクしていただきたく願い続けますが…。

それらを鑑みると、過去作品の決算的事業は
還弦主義8760時間とハルディンドーム発表をもって
ピリオドが打たれたと考えるのが自然でしょう。



合わせて、ハルディンドームに付属のブックレットに載せられた手記は
数年前のインタビューでたびたび言及していたキーワード
「ヒラサワの素材化」を具現化する作品であると受け止めます。

かつて、インタラクティブライブ「点呼する惑星」の感想として
2009.4-26の当ブログ『「点呼する惑星」と「ヒラサワの素材化」』の中で
私は以下のように書きました。
http://vistoron.blog.so-net.ne.jp/2009-04-26

> 平沢進の過去の作品群、つまり、
> P-MODELから平沢ソロ、その他もろもろに至る
> 各楽曲・アルバムコンセプト・それらを取り巻くトータルな世界観、
> 例えば、SCUBAにおける「SCUBA物語」や
> P-MODEL解凍にまつわる「マンデルブロの森にテクノ有り」、
> 救済の技法に関するエッセイの
> 「工業製品『救済の技法』という音楽パッケージの原産地より」などの
> バックボーン的なストーリーまでもが、
> ヒラサワ自身の中ではすでに素材としてアーカイヴ化がなされて、
> 新たな作品を創る際に出てきたキーワードの中に、
> それらとリンクできる過去作品のアーカイブがあれば
> 必要に応じて取り出して柔軟に活かせる状態で保管されている状態が
> 「ヒラサワの素材化」という発言だと受け取ります。


その方法論に沿って仮定すると、ブックレットの文章では、
各楽曲の一節が取り上げられ、補足されるかのような形の文節により、
一つのストーリーがあたかも最初から存在してたかのように表現されてます。
もちろん、今回発表のストーリーはごく最近に創作されたものでしょうし、
平沢氏がそれぞれのアルバムを製作中のリアルタイムな過程で、
このように連結したバックボーンを考えて作詞表現してたわけでは
けっして無いでしょう。

裏を返せば「平沢作品のアーカイブ化」テーマから産まれた
今回のBOXセットに寄せて新たなバックストーリーを構築するにあたり、
先に挙げた「ヒラサワの素材化」手法に基づいて
点々と散らばった過去楽曲詞の世界観を、
素材として線に繋ぎ、必要に応じて取り出して、
一つの形に当てはめられる各楽曲の一節を拾い上げてまとめたものが、
ブックレット収録手記ストーリーのカラクリだと読み解きます。



また、この手記は過去作を俯瞰したストーリーでありながら、
同時に次作に繋がる世界観を記したものであるとも感じます。
例を挙げると太陽系亞種音に収録されたライナーノーツ「アシュオン実験白書」が
次回作である核P-MODEL - ビストロンで描かれた世界観の一端をそのまま示してたように、
(余談ですが、あの時点でP-MODEL培養が叶っていれば
 「アシュオン実験白書」のストーリーに基づいたテーマで
 継続活動するP-MODELが見れたであろうと妄想します)
ハルディンドームブックレットで語られた世界観が
現在製作中と報じられる次回作以降に影響を与えると予想します。

特にハルディンドーム特設サイトにおいて
> その旅は今なおどこかで続いていると思われる節があり
と書かれている通り、会員特典グッズにも記された一文が
重要キーワードへとなっていくのではないでしょうか。
(※この一文はブックレット手記から抜粋されたものです。悪しからず)


内容構成と価格の吊り合いから、リスナーのネットコミュニティでは
アルバムを既にコレクションした人達や
価格面から手を伸ばしづらそうにしてる人達を中心に、
賛否両論の意見を散見します。

しかし、この先に展開するであろう
平沢進の創作テーマを深く読み解きたいリスナーならば
ハルディンドームは入手すべきだと、結論づけます。
なぜなら、このBOXは過去作をまとめたアーカイヴであると同時に
平沢進の現行最新作だからです。
現在製作中の次回作は、ブックレット手記の
ストーリーを踏まえたものになると予想するのは自然でしょう。


当たり前ですが、これまでのアルバム・ライブのように
一見の方々でも単体で十二分に楽しめる作品が提供されるはずです。
ただし、ヒラサワの中では素材化されアーカイヴとなった
バックストーリーからも構築されるでしょうから
単体でも楽しめるが、深く追えばより理解が深まるのは世の常かと。
それらの予習と復習に適したライブラリとしての価値も高いと考えます。



「還弦主義」なる手法でP-MODELとソロのボーダーレス化を成し、
ミュージシャン活動三十余年の記録をアーカイヴしたヒラサワが
手品師というスキルも身につけ、トンネル分銅を携え、
次なるベクトルへと踏み出す第一歩。
それが公に明かされる日を心待ちにしつつ、
リマスタリングされて磨かれた楽曲と妖しげなストーリーに浸って
読み手の勝手な考察を深く進めたいと思います。


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コメント(2) 

コメント 2

あしゅおん

なるほど
by あしゅおん (2014-06-04 16:03) 

ジフ

現象の花の秘密などが出る前の記事ですねこれ。
なにやらご納得いただいたようで恐縮です。
by ジフ (2014-06-08 10:41) 

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更新 2012.02.09更新 2012.03.26 ブログトップ

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