SSブログ

Interactive Live Show 2013 「ノモノスとイミューム」雑感 [四方山話]

およそ三年半ぶりのインタラクティブライブ、堪能してきました。
楽しかった記憶が薄まる前にテキストへと落とし込みつつ
今回のインタラを振り返ろうと思います。


先に結論を出すと、「ノモノスとイミューム」は
私がインタラ開催前に考えていた当初の予想を、
ことごとく覆されるようなストーリーとシステム、パフォーマンスでした。
それもすべて良い意味で。

東日本大震災後の世相を暗喩するようなダークな筋書きを想像してましたが、
それらに対する平沢氏の結論と今後の展望は
2011年9月の「imago」寄稿文にて既に表明されていた通りでした。
ストーリーの内容に対する考察は、インタラ開始前後から
ライブ観覧者のみなさんがあらゆるところで深く掘り進めていて、
色々考えさせるものや納得するものを幾つも拝見しましたが、
その中でも@monikuraさんの
https://twitter.com/monikura/status/295949531273650177
> 今回のインタラは、3.11以降「冠毛種子の大群」という絶望に覆われている世界を
> 「笑い」で救済するということだったのかな。
という発言には、特に深く頷きました。


システム面も、初日を終えてのTwitter NO ROOMアカウントや平沢氏アカウントの発言、
それらを受けての「ひ組」(http://higumi.com/)インタラ考察特設ページでのマヒトさんが仰った
> 今回のインタラは今までとは違う趣向のように思えます。
> GOOD/BADという考え方ではなく、ノモノスとイミュームというストーリーを
> 「最後まで再生できるか」というゲームなのではないでしょうか。
上記の発言が端的に全容を表してるように見受けます。

全公演終了後までに明かされた内容から想像すると、
ストーリーはステージの進行に従って幾つも分岐をし、
本来の目的である「ノモノスを植物園に返す」点に於いて
それを実現できるエンディングがストーリー上での一なるハッピーエンドだが、
3つのエンディング自体はすべて等価である……ということでしょうか。
会期中に見れた結末はどれもヒラサワのユーモアにあふれた痛快なものでした。
今 敏監督の奥様である京子さんが初日終演後に発言されたツイートは胸に沁みました。
https://twitter.com/choukofu/status/294619047729967104


前回のインタラ感想をこのブログに書いた時に
http://vistoron.blog.so-net.ne.jp/2009-04-26
「ヒラサワの素材化」について私なりの解釈を記しましたが、
今回のライブではライブの半月前に「作者退場」が予告されました。
http://twilog.org/hirasawa/date-130108
これを読み、実際にどのように表現されるのか楽しみに見ましたが
いやはや、こちらも想像を上回るほど一貫性ある映像作品。
まるでサンプリングで別なる音楽を構築する手法に通じるものを感じました。
ネット上に無数ある平沢MAD作品から着想を得て
ユリイカ別冊初音ミク特集で語られた様々な問題点を
ヒラサワ流の返答でターンパスしたような趣きです。


情報投影スクリーンを通例であるステージ前方紗幕から後方へと移動した効用でしょうか、
今回は舞台美術も非常に凝っていて見どころたっぷりでした。
いまやヒラサワの代表的楽器であるレーザーハープも新造され
場内ところ狭しとレーザーが六方に飛び散る仕様になり、
視覚効果が非常に高い舞台美術の一環として成り立っていました。
いやああれは恐ろしくカッコ良かった。
あの会場全体を貫くレーザー効果は映像には決して収録しきれまい。
後々まで語り継げるようなパフォーマンスでした。

後々まで語り継げるといえば、メジャーレーベルから逸脱して十数年、
レコード会社の資本に頼らずに渋谷公会堂3デイズを満員にできる集客実力は
もはや化け物としか表現できません。
最終日公演にいたってはFC優先予約でも抽選となる勢い。
この先のライブはどのような会場で開かれるのでしょうか。
たまにはライブハウスで酸欠になりながら溺れ見るのも楽しそうです。
師弟的存在にして長年の盟友である折茂昌美さんとのコラボライブなんて
もっとしっかりと見たくて仕方ありませんし、
さらに強欲になれば二人を軸に据えて土台をしっかりと造成したユニットを叩き上げ
それに長らく封印する「あのバンド」の名を冠した姿を見てみたい。
妄想は尽きませんが。
いずれにせよ、今後の動向にも目が離せないことは間違いありません。


今となっては出典が定かではありませんが、
かつての平沢氏は「60になったらSF作家になりたい」との主旨の発言を
(真意は測りかねますが)割としていたように思い出します。
それを氏の理想の形で具現化したのが他ならぬインタラクティブライブだと
近年とみに感じるようになりました。
自分の作品世界観にバックストーリーを盛り込んで己の用意した劇伴付きで演じられ、
作り出した結末を幾つも用意できて提示でき、それらの選択は読者観客次第だなんて。
このようにトータルな作品をパッケージできる環境って、
文章単一での表現に縛られるSF作家よりもきっと
氏にとって魅力的なのではないかと想像します。そうあってほしいと願います。

----------
全公演終了後の翌日、平沢氏はTwitterを用いてメッセージを投じました。

https://twitter.com/hirasawa/status/295356517421555712
> 普段悲観的なrepの目立つ人たちに元気が見えます。
> 約二時間程度の間でしたが、皆様の中に住む100人の名医が働きやすいよう、
> 何らかのくびきが外れたのでしょうか。これは私にとって戦争なのです。

https://twitter.com/hirasawa/status/295359516474761218
https://twitter.com/hirasawa/status/295362911046623233
> 私の言うことがわからなくても問題ありません。
> 古いファンなら知っているでしょう、
> 私におしえられるものなどなく、皆さんが自分て到達するのを助けるんです。
> それがヒラサワの仕事です。覚えておいてください。

このメッセージを受けて「imago」を読み返すと、
今回の新譜~インタラクティブライブについて、また新たな発見があるかもしれません。

現代思想2011年9月臨時増刊号 総特集=緊急復刊 imago 東日本大震災と〈こころ〉のゆくえ

現代思想2011年9月臨時増刊号 総特集=緊急復刊 imago 東日本大震災と〈こころ〉のゆくえ

  • 作者: 中井 久夫
  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 2011/08/24
  • メディア: ムック


※本文中の引用句において、原文から改行変更したものがいくつかあります。
 あしからずご了承下さい。
コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント